2010年6月27日日曜日

Freiburg: Vauban


Vauban在住時代、水曜日と言えばHaus 037の前の広場で開かれるMarkt: 市場の日だった。
バイト先でもらう米に追われたり、あまりちゃんと自炊というものをしていなかったので、この市場をよく利用していたわけではないが、雰囲気なら多分に味わっていた。このVaubanという特殊なエリアにおいて、地元産の食材が集まるMarktというものが機能していることを、当時もこの時も確認したかったのだと思う。地元の写真家が撮ったポストカードの写真でしか、雪景色のVaubanは見たことがなかったけど、足を滑らせそうな状態ではあるが、新鮮できれいだった。

当時、今思えば私はものすごくアンバランスな状態だった。というより、ただ捻くれ怠けていただけかもしれないけど。大好きなVaubanに浸っている自分に浸っているというお粗末な留学生だった。自分が大好きな所に無条件に居られるということは、それだけで満たされた気持ちになるので、ものすごく危険である。どうにか自然な形でVaubanに入ろうすること自体、何重にも何重にも議論を続けて作り上げられたこの理想郷を前にすると、無意味で浅はかな行為だったことが今やっとわかる。むしろそれ以前に、「行って住む」という思いが強すぎて、その先の目的というものが見えていなかった。

当時、Vauban至上主義で現実に存在する理想郷だと思っていた私に、Vaubanが嫌いだと言った人がいた。子供向けの文房具屋で、遊び道具を時間でシェアするシステムがあったのだが、それを「馴れ合っていて嫌」だと。有名な制度であったわけではないが、それはドイツ人的な思考を否定しているわけで、陶酔している私を醒ましてくれる意見だった。そういう見方もあるんだと、少し引いてニュートラルに見れるようになった。
それでも今改めて、Vaubanはやはり理想郷だと思う。
今になってようやく、村上敦 著「フライブルクのまちづくり」を読んだけど、私が当初思ったことは間違ってはいない。"Vauban"を頭に浮かべただけで、目が潤むのはきっとそのせいだ。


夕方より、お好み焼きパーティーに参加。ドイツ、韓国、日本の哲学専攻の学生の会話が専門領域に入ると、ただ見守るしかできないのが辛い。

(18. Feb. 2009)

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